これが私のモットー
りゅう先生 著

生徒にはジョークで対応する。これが私のモットー。

「先生、テスト簡単にして」「わかった」。テストが終われば文句が来る。「先生、テスト難しいやん。うそつき」「おかしいなぁ。おれが解いたら全部できたのに」こんな調子である。

「先生、悩みってある」「あるある。自分のライバルがいないってこと。ほらっ、俺って格好いいからさ。張り合う相手がいなくて困ってるとこ」毎回ジョークで対応していると、生徒も愉しんでやってくる。次はこいつ、何を言うんだろうと期待に胸をわくわくさせながら来る。

「先生とGTOって月とすっぽんだよね。あっちは格好いいのに。こっちの先生ときたら」「君とGTOに登場する生徒も大違いだ。ぶたと真珠って感じかな」レポートがとれれば、たいていの悪口にも生徒は怒らない。

こっちもそれに負けないくらいひどいことを言われるが、それはそれでいい。お互いギリギリの一歩手前でジョークのかけあいをする。

「どうして学校にこないといけないの。勉強ばっかりでつまんないよ」「学校が何のためにあるのか、知ってるのか。生徒に教えるためだ。人生は思い通りに行かないものだということを」中学生は生意気だ。

下手をすると大人でも負けてしまう理屈を言う。理屈にはジョークで対応する。彼ら彼女らはそれで納得する。

「あああ、先生たちはみんな車で来るのに、なんで俺たちばっかり徒歩なんだよ」「悔しかったら教員採用試験を通ってこい。そしたらいくらでも許すぞ」とかく生徒は教師と自分を同じ位置に置きたがる。それが間違っていることを教えるのは簡単だが、上手に教えたい。

「どうして先生たちは背広なの。私たちと同じ格好しなさいよ。そうすればどんなに制服が窮屈かわかるから」「そんなことしたら気持ち悪いだろう。君たちのことを思って我慢してるんだ。わかってくれよ」女子生徒にはジョークが効果的である。男子生徒では真面目にとらえて、落ち込んだり、怒ったりするのでいけない。女子は柔軟性があるので。ジョークも理解してくれる。

「あああ。ここに金八みたいな先生がいたらなあ」「あああ。ここにいるのがみんな、あのドラマに登場するような、聞き分けのいい、素直な生徒ばかりだったらなあ」生徒はドラマの教師と現実の教師を比較したがる。それに真面目に反応することはない。こっちも比較して反論すればいいのだ。

「こんな世の中なんておさらばしたいぜ。死んじゃってもいい?」「そんなに早く地獄へ行きたいのか。まだ満員だって話だぞ」死ぬという単語を生徒は簡単に発する。その意味を理解した上で、冗談のように口にするのだ。そういう場合はジョークで明るく応対しよう。

「マジ? やってらんねえよ。こんな授業」「こっちだってやってらんねえよ。こんな授業。ようし、みんな、お昼寝タイムだ」こんなことを一回でいいからやってみたい。幼稚園児に戻って、みんなすやすやと眠るだろう。

「俺、片思いの女の子がいるんだけどさ、やっぱ告白するのやめたんだ。俺には釣り合わないって思ってさ」「なんてお前はいいやつなんだ。お前のその勇気によって女の子が一人、不幸から救われたぞ」中学生の恋の悩みなんてしょせん遊び。真剣に悩んでいる男子も女子も、実は恋している自分に酔っているだけ。こういう生徒は簡単に打ちのめすことができる。

「ああ、あの人のことを思っていたら昨日も眠れなかったわ。あの人に私の思い、届いたかしら」「だから授業中によく寝るのか、お前は」女は恋に恋する動物。真剣に悩むことはまずない。適当にあしらっておくのが一番。

「きっといつか白馬にまたがった王子様が私を迎えにきてくれるんだわ」「ぱっか、ぱっか、ぱっか、ひひん」「きゃああああ」「この嘘つき女! 白馬にまたがった王子様がいいっていったじゃん」女は夢を見る動物。女子中学生もまた同じ。そんな夢は早めに砕いてやるのがいい。

「どうして先生は先生になろうと思ったの」「目の前にいる相手がテストで苦しむ様子を見たいと思ったからだよ」

 中学生の相手は苦しいとか、難しいとか言われる昨今。私はジョークで渡り歩いている。それがいいかどうかは別にして、ジョークを扱える人間は心に余裕を持っているから、生徒とも適切な関係が作れる。
落ち込んでいたらジョークで笑わせる、失敗したらジョークで励ます。

こうやってすでに10年が過ぎた。どこの職場でもジョークは不可欠なものだろうと思う。教育現場はとくに。

おそまつさまでした。

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