どうしてお前はそんなに元気なんだ。
夫はこの頃、私の元気を持てあましているようだ。
たしかに、当の私も面くらうほど、この頃の私は元気いっぱい。
理由はいくつかあるが、リサイクルショップで見つけた楽しみこそ、最大の元気の源である。
この春、母が亡くなった。
二年前に父も亡くしていて、さびしさもひとしおである。
なかなか立ち直れなかった。
七年間、ずっと自宅で介護していた。
精一杯世話をしたつもりだった。
しかしふたりともいなくなって後悔が残った。
何を見ても何を聞いても父と母が思い出され、悲しみに沈んでいた。
夫の協力がなければ家事もできなかった。
家に閉じこもることが多くなった。
見かねた夫が、ある日、隣町のショッピングセンターに連れ出してくれた。
衣料品、靴、日用雑貨、食料品、花、本などの小売店が並んでいる。
鮨屋やレストラン、ハンバーガーショップなどもある。
駐車場をはさんで反対側に「オフハウス」という大きな黄色い看板が目に入った。
看板の下の方に
「お売り下さい、エコリサイクルファクトリー」
と書いてある。
店内をのぞくと、客が大勢いる。
カウンターの前には、品物をかかえた人たちが行列を作っている。
「資源を大切に使いましょう。お売りください。ハードオフ」
軽快なリズムとともにアナウンスが聞こえる。
奧は家具売り場。
茶ダンス、和ダンス、洋ダンス、机、本棚などが並んでいる。
三段重ねの桐ダンスもある。
母もそれによく似たタンスを持っていた。
母の死後、私がそれを引きついだ。
母のにおいがしみこんだタンス。
私は夫に頼んでそれをこわしてもらい、燃えるゴミに出してしまった。
見るのが辛かったのである。
売り場には三さおの桐ダンスがあった。
それぞれが微妙に違っているが、どれも長い間、持ち主にいつくしまれたのであろう。
きっとまた新しいご主人に出会い、大切にされるだろう。
母のタンスをゴミにしてしまったことが悔やまれた。
母のようなやさしい女性にもう一度めぐりあえたかもしれないのに。
ゴミ問題は、社会的にも大きな問題になっている。
日ごろは、少しでもゴミを減らすよう気をつけている。
生ゴミはコンポストに入れ、牛乳パックや食品トレイは回収ボックスに運ぶなど。
しかし大きなことが抜けていた。
リサイクルこそ、ゴミ減量化の有効な手段ではないだろうか。
そんなことを考えながらあたりを見回すと、若い女性がスーツを二、三着かかえて試着室から出てきた。
またセーターや毛皮のコートなどを積んだ、ショッピングカートを押している女性もいる。
試着したワンピースが気に入ったのか、ぬぐのはいやだとだだをこねている女の子もいる。
私も洋服をさがし始めた。ワンピース、セーター、コート、スーツなど色も形も種類が豊富で値段も安い。
中古品とはいえ、クリーニング済みで清潔であり、未使用のものもある。
欲しいと思っていたヤッケを見つけた。
ショッキングピンクである。裏はパープルのキルティング。暖かそうだ。
その場で手を通して鏡を見たら、もうすぐ六十歳の自分がかわいく見える。
こんな派手な服は着たことがない。
背中と前身頃の左側に白とブルーで英語の文字がかかれている。
派手すぎるか。迷いながらポケットに手を入れたら、中からお守りがでてきた。
即座に買うことに決めた。このヤッケを着れば元気が出ると思った。
お守りつきのヤッケが五百円だった。
次の日、買ったばかりのヤッケを着て夫と散歩した。
オフハウスまでおよそ五キロの道を一時間半ぐらいかけて歩いた。
初めは肌寒かったが、ヤッケが風を防ぎ、歩いているうちにだんだん暖かくなった。
牧場跡をぬけ、新興の団地を通り山道にさしかかった。
落ち葉を踏みしめて歩きながら、夫とこれからのことを話しあった。
オフハウスに着き、衣料品売り場に直行した。
あれこれと試着し、デニムのジャケットとスカートを買った。
どちらも若者向きである。
冒険ではあるが、一度は着てみたいと思っていた。
それ以来、私は何度もこのオフハウスを利用している。
買うだけでなく、不要の衣類やバックなどを売ることもある。
おかげで納戸の整理もできるし、私はわずかのお金で、今までしたことのないオシャレを楽しむことができる。
何よりも嬉しいのは、この楽しみのおかげで外の世界に関心を向けられるようになったことである。
これからもオフハウスを利用し、ますます元気になりたいと思っている。