“客がよろこぶこと”
これが商売の条件
佐藤 健

グラフィックデザイナーをやっていた私は22歳の時に、喫茶店を居抜きで買った。

そのまま商売をやったが、喫茶店では儲からないと分かると若い男の子だけを4人使い、スナックに切り換えた。当たりに当たった。

1年後に潰れた元居酒屋だった6坪程の貸店舗を借り、アングラのディスコをやった。家賃は1万円だった。
主な照明は、アッパーホリゾントライトぐらいで、フロアはゴザである。百円の入場料で1日、200人入った。ドリンクが1杯300円で、1日の売上げが10万円あった。従業員は2人だけである。

同じその年に、同じ6坪程の店に「××で2番目に安い店・・・」というのをやった。カウンター10席、6人程が入れる小さな座敷が一部屋で1日に15万円の売り上げがあった。早朝4時までの営業だった。

勢いづく私は調子に乗り1年後に、銀行から金を借り2億円をかけ、カラオケをミックスさせた本格的なディスコを建てた。

その市には1軒だけのディスコは、連日大入りだった。しかし、2ヶ月後に同じ規模の高級な造りのライバルのカラオケクラブができ、私の店のカラオケの客は愕然と減った。

さらにはディスコの音がうるさ過ぎて落ち着いて飲んでいられないと、敬遠していく年配の客が多くいた。5万人足らずの人口では、踊る客も限られていて、1年も持たずに1億円の借金を残し、倒産した。

そのころ、アルコール依存症になっていた私は躁うつ病になり、精神病院に入院した。離婚も余儀なくされ、生活保護者となり、人生は一変した。初めて入った精神病院に戸惑いながら、そこで1年を過ごした。

負けん気の強い私は、つまずきながらも静か過ぎるほど静かな病院の床の中で懲りもせず、ある計画を練っていた。

息の詰まるような病院にも懐かしさを覚えたころ、退院した。実家に着いた私は、食堂と雑貨店を営む母に有無を言わせず、300万円を借りた。20坪の貸店舗を借り、飲み物、つまみ、オール100円の居酒屋を開店した。24時間営業である。

不景気の真っただ中、客は小銭を握り、朝からやってきた。注文と同時に金を受け取る、完全前金制である。

勤務は3交替制で、営業時は3人の従業員で客をさばいていた。

酒類は製造元から直接仕入れたり、ディスカウントストアから買ったり、つまみは、安売りの時に大量に買い込み、冷凍してストックしておくのである。つまみは注文されて、30秒以内でできる物に絞った。すぐ出せるように仕込んでおき、また電子レンジをフルに活用した。

お新香や、冷や奴などは皿に盛っておき、注文と同時に出せるようにセットしておいた。

お客様へのサービスとして、1000円以上の飲食の客には集めると景品がもらえるサービス券を発行し、さらにその券のナンバーで月1度、宝くじのように抽選があり電化製品などがもらえるようにしてある。

また店の中に、男と女の名前が書いてあり、その名前と客の名前が同じであれば記念品がもらえるというサービスもやった。

さらには、雨の中をよく来てくれましたという、雨の日プレゼントもやった。そして会計時には、全員の客に額に応じた粗品、ポケットティシュ、タオル、グラス、灰皿などのサービスもした。粗品は取り引き先からもらったものを使い、店の負担にはならない。

1人の飲み代が平均500円で、1日500人の客があり、日に25万円の売り上げがあった。1ヶ月の売り上げが750万円ほどで、純利益が200万円ぐらいであった。

これは絶対大丈夫と思った私は2ヶ月後、親友から金を借り、市内に4店舗、その市の近くの町に5店舗を一気に開店した。狙いは的中した。

現在、10店舗合わせた年間の売り上げが10億円近くある。ディスコをやった時に作った1億の借金は楽に返した。

それでも、ディスコの失敗が忘れられず、また、私自身、踊りが好きなこともあり、経費をできる限りかけず、50坪のアングラのディスコを建てた。

やはり24時間営業で、従業員はたったの8人である。ほとんどセルフサービスにした。これも当たりに当たった。500円の入場料で1日に500人は入る。ドリンクを合わせると1日の売り上げが37万円である。月に1000万円ほどの売り上げになる。

借金にも病気にも負けずに走りつづけた私は今、ゆっくりと、新たに、オール300円のコンパを計画している。

世の中がどんなに不景気でも、どんなに競走が激しくとも、客が求めているもの、客の心をつかめば客は付いてくる。

それと同じく大切なことは、奉仕の心、感謝の心、やさしさ、ぬくもりがなければ客は付いて来ない。

成功の秘訣、それは、初歩的なこと、客がよろこぶ店、客がよろこぶ仕事をする、それが最大の条件である。

                         

(秋田県発信)

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