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私にはチャンスさえあれば、もう1度やってみたいとひそかに思っていることがあった。
それはたくさんの子どもたちを前に、紙芝居をやるということ!
思いつきでいっているのではない。10年以上も前のことになるけれど、息子が4歳のときに引越してきて、近所に遊び相手がおらず困った。そこで私は、保母資格を持っていることを武器に、公民館を借りて子どもたちの遊びの教室を開いた。
最初は息子が幼稚園にあがる1年間と思っていたのが、どんどん人数が増え、結局やめるにやめられず、5年間開くハメになってしまった。
遊びの教室では幼稚園前の幼児を対象に、ダンス・歌・工作・紙芝居等々をやった。
なかでも子どもたちのお気に入りは、紙芝居だった。
どんなに元気に騒いでいた子も、みんなシーンとなって聞き入ってくれる。
どの子の顔も、紙芝居の中のお話しの世界にひきこまれ真剣そのもの。
こちらも読み聞かせに慣れてくると、どこらへんで子どもたちが喜ぶか、どこでのってきてくれるかわかるようになった。
ここぞと思う時に子どもたちが声をあげてくれると話者としては、してやったりとうれしくなるし、子どもたちがのってきてくれると私まで興奮し声もうわずってくる。子どもたちの息と私の息が肌で感じられるその一瞬一瞬に『ビビビッ』とくるのが何ともいえない。
遊びの教室は私の会社勤め再開で幕を閉じたが、いつも私の頭の隅には、いつかまたあの子どもたちとの『ビビビッ』を味わいたいと夢みていた。その反面、あの当時の体力も若さもなく、子どもたちとのことは、いい思い出として終わってしまうんだとあきらめていたけれど・・・。
それが今年5月、知り合いの人が私にこんな話をもってきてくれたのだ。
「ねえ5月26日の日曜日に、会社のイベントとしてお客様感謝デーをやるのよ。それでね、その時に子どもたちに紙芝居を見せてやろうという話がでたの。ねえ、やってくれないかなあ」
私の胸はドキンと高鳴った。即「やるわ、やらせて」と叫んだほど!
さあそれからは感謝デーを1ヶ月後にひかえ、私は紙芝居の練習に明け暮れた。人はたかが紙芝居を読むだけなのにと思うだろうけれど、俳優さんの役作りがそうであるように、お話を自分のものとするには、何度も何度も練習が必要である。
話が自分のものとなってこそ、はじめて子どもたちにいい紙芝居ができるというもの。
私は幼児向けの「はみがき」という、動物たちが虫歯にならないように歯みがきをするというお話と、小学校低学年向けの動物のでてくる友情のお話の2つの紙芝居をすることにした。
「はみがき」は、読めば数分でおわる短いものだったので、私はアドリブで手を使いゴシゴシと、動物が出てきて歯みがきをする場面ではみんなといっしょに歯みがきをやることを考えた。
また低学年向けの紙芝居で、動物が歌をうたう場面では、照れを捨て自分でそれらしく節をつけ、大声で歌うことにしようと決めた。とにかく次から次から私の頭の中には、いろいろなアイディアがうかんでくる。
そのたび私はニンマリとし、1人笑ってしまう1ヶ月だった。
のどの調子にも最善の注意をはらい、うがいは毎日欠かさず、ちょっとカゼ気味かなと思えば、ふだんは薬など飲まない私なのにカゼ薬を服用するといった徹底ぶり。
そして、とうとうその日はやってきた。
空は晴れわたり、絶好のイベント日和。
お客さんは陽気にさそわれ、どんどんどんどんやってくる。私は久しぶりの紙芝居に胸がドキンドキンとなり、何だか落ち着かない。
しかし不思議なことに時間がきて舞台に上がると、恥ずかしさはどこへやら、不安も吹っ飛び妙に落ち着いて(やったろやないか)なんて気分になった。こうなったらしめたもの。
もう私の独壇場。お客の顔色をうかがう余裕まで出てきて、笑いがとれそうだと思えばもう一度くり返してみたり、ちょっとシラけるなと思えば、サッサとその場面は飛ばしてしまうという余裕。
ああこの感動! この興奮! このお客さん(子どもたち)との連帯感!
私の身体を『ビビビッ』とあの夢みた感動が走る。
さあまた機会があればやってやるぞー。
「みなさーん、こんにちは! 元気ですか? さあ今から私がみんなにお話のプレゼントをします。お口にチャックして、静かにきいてね。では始めますよー」
なあんてね。
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