生きた!
眞保 慶一

昔から植物を育てることが好きで、いろんな苗木を貰ったり、拾ってきたりしている。そんな中に桜も混ざっている。

この桜は、約4年前に、でっかい桜の木の根本から生えていた苗木を切って、鉢植えにしてみたら、見事に根付いたやつである。

根本から芽が出るという事は、木がだいぶ弱っているからで、「すぐ枯れてしまうかもしれないな」と思いつつ育てているうちに、4年も経った。

毎年春になると、青々とした葉を出してくれて、今では僕の膝くらいの高さにまで成長した。
去年、葉に毛虫が付いていた。毛虫は嫌いだけど、自分が育てて、大きくなってきた木に初めて毛虫が付いているのを見た時、やっと木として認めてもらえたようで、ちょっと嬉しかった。

そして今年の春も、眩しいくらい緑の葉を出してくれて、またひとまわりり大っきくなってくれた。
しかし、7月のある日、植木鉢の雑草を抜いていると、葉が少しおかしい事に気づいた。全体的に色あせて、緑がくすんでいるように見える。

少しおかしいなと思ったが、これくらいの色ならば大丈夫だろうと、ほったらかしていた。しばらく日が過つと、さらに色が悪くなってきて、葉の張りも無くなってきた。
「おかしいな・・・、水は大丈夫やし、栄養不足か?」とも思い肥料をやる。

そして数日・・・、さらに弱ってきた。葉は黄色くなり、枯れだす枝も出てきた。
「このままやったら枯れてしまう!」冷汗が出てアセッた。

農芸に詳しい友達にも聞いて、良いと思ったものはすべて試していった。しかし、桜は日に日に弱り、葉もしわくちゃになり、半分以上が黄色くなり、垂れ下がってしまった。
「枯れてしまう・・・」

数日後、残りの葉すべてが緑色を失ってしまった・・・。
「もうアカンな・・・、弱った木から取ってきた苗木やから、決して強くないしな・・・、寿命やったんやろ。仕方ない・・・」と思うが、やはり何年も自分が育ててきた木である。

なんとかしてやりたい。自分が諦めたら本当に枯れてしまう。

このままでは、枯れてしまうのも時間の問題なので、どうせダメなら思いきって自分の思うようにやってみようと考えた。さっそく最後の希望をかけて手を尽くしてみる。

今まで使っていた鉢から木を抜き、余分な根を落とした。そして、速効性のある化学肥料は使わず、油かすなどのじわじわと効いてくる肥料を使い、新しく土を作り、鉢も大きなものにし、植え替えた。

そして、大きく広がっている枝々も、枯れかけているので、余分な場所に栄養が行かないように、土から5センチくらいのところで幹を切ってしまった。
さすがにこの瞬間は手が震え躊躇した。

終わってみると、今まで膝まであって、腕をいっぱいに広げていた桜の木は、土から小指が“ニュッ”と出ている程度になってしまった。
「枯れるなよ。将来自分の家を持ったら、庭に植えて、でっかくしようと思ってるんやから・・・」

数ある鉢の中でも、いい位置に置いてあった桜だが、この日から後ろの方のほとんど目立たない場所に移動。しばらく観察していたが、表皮は乾燥し、見るからに枯れてしまった。

「やっぱりアカンかったのかな・・・肥料やりすぎたんかな・・・水多すぎたんかな・・・」
ガッカリだった。
この経験を次回の糧にすれば良いとは思うが、後悔が残った。

次を植える予定も無いので、そのまま置いておき、とりあえず水はやるようにしておいた。

夕方に秋を感じるようになりだした頃、久しぶりに雑草取りをしていた。そして桜の鉢にも生えていたので、抜いていたところ・・・。
「・・・!?・・・!!あーっ!!!」

なんと新しい葉が脇から出ているのを発見!
「い、生きてたんや・・・」
完全に諦めていた。もうだめだと思っていたのに、幹の中間から立派な芽が出てきていた。

「やった・・・」とにかく嬉しかった。
「ありがとう。また一緒やな」

背は低くなってしまったけれど、また伸びるのを待てばいいだけだ。
「よし、将来は俺の鉢植を全部庭に植え替えたる!」

一段と木が好きになった、ちょっとした事件だった。

                         

(京都府発信)

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